2019年10月02日 公開
――福田CEOが取り組んでいる新たな事業として、今年2月に正式リリースされたアプリ「ReSACO(リサコ)」があります。
福田 企業から出る不要物を販売するプラットフォームサービスで、いわばメルカリのBtoB版です。販売したいモノの写真をスマホで撮ると、AIが画像認識をして、参考価格を表示したり、タグをつけたりする機能もついています。
――どのような経緯で始めることにしたのですか?
福田 世の中でAIが話題になっていますが、自分でやってみないとわからないと思って、2017年にAIについての研修を受けたのが最初のきっかけです。中学・高校の数学から勉強し直して、簡単なAIのプログラミングを体験するものでした。そこで改めてITの面白さを実感するとともに、ITを使って業界を効率化しようと考えるようになりました。この業界では大手商社とのやり取りでさえFAXを使っていて、非常に非効率なんです。
IT化を進めるうえでは、IT企業やIT人材が集積している東京に立地していることが強みになるとも考えました。実は、東京は土地が高いこともあって、工場が狭く、なかなか新しい設備を入れられないため、地方の産業廃棄物処理会社よりも設備投資が遅れています。また、地方の処理会社は地元の名士が経営していたりして、優秀な人材が集まりやすいのですが、東京では他の業界に人材が流れやすい。そんな中、東京の強みを活かせるのがIT化なのです。
具体的にどのようにITを活用するかを考えたときに意識したのが、メルカリでした。
当社はこれまで、不用品をゴミとして処理し、資源ゴミは新たな製品を作るための素材としてリサイクルをする事業をしてきましたが、これからは不用品を捨てない社会、つまり「サーキュラー・エコノミー」の時代が来ると思います。不用品を売買する市場の他にも、リペア(修理)をする市場も広がるでしょう。そもそもモノを持たずにシェアする市場も広がっています。ReSACOは、そうしたサーキュラー・エコノミーの一角を成すサービスです。
――ReSACOの開発は、どのように行なったのですか?
福田 もともと社内には開発できるエンジニアがいなかったので、金融機関に開発会社を紹介していただいたりして人脈を作り、入社してもらいました。「BtoB版のメルカリを作る」という話をすると、興味を持っていただけるエンジニアは多かったですね。
――ReSACOの事業は、東港金属とは別会社のトライシクルを設立して行なっていますね。
福田 東港金属がエンジニアを募集すると、社内システムの開発や運用をする仕事ではないかと思われてしまうので、別会社にしました。また、事業内容が違うので、会社も分けたほうがいいとも考えました。
ちなみ、産業廃棄物として東港金属がお引き受けしたモノは、きちんと処理するということでお引き受けしていますから、まだ使えるからといってReSACOで販売することはありません。
――ReSACOをリリースして、ユーザーの反応はいかがですか?
福田 不用品を売買するプラットフォームといっても、CtoCのメルカリとBtoBのReSACOでは違いがあるのを感じています。売り手がどんどん出品してくれるというわけにはいきませんでした。
そこで、販売するモノを自社で集めるために、「プレミアム無料回収サービス」と「不用品まるっとおまかせサービス」を始めました。「プレミアム無料回収サービス」は価値のある不用品を無料で回収するサービスで、「不用品まるっとおまかせサービス」は、オフィスや店舗、倉庫などを移転する際に出る不用品を、まとめて回収するサービスです。「不用品まるっとおまかせサービス」は有料ですが(見積もりは無料)、すぐに退去したいというニーズに応えています。
――集めたモノは、どうしているのですか?
福田 千葉工場に隣接する約2万3,000坪の土地に集積しています。今はコンテナに入れている状態ですが、10月中旬には倉庫が稼働する予定です。
――買い手については、いかがでしょう?
福田 他のリサイクルショップよりも安いですし、やり取りもアプリ上のチャットで済ませられるので、喜んでいただいています。
先日は、故障したチラー(冷却水循環装置)を大阪の会社に購入していただきました。おそらく、分解して部品を使うのだと思います。部品を取り寄せるよりも安いですから。
また、一部はリサイクルショップなどにも販売しています。
――買い手への配送は?
福田 東港金属の回収車が走っているエリアでしたら、それに積んでお届けします。大阪のようなエリア外の場合は、配送業者にお願いをして、配送料をいただいています。
――ReSACOの今後の展開として、どのようなことを考えていますか?
福田 例えば、別々の場所から回収してきたモノを組み合わせて「応接セット」として販売するなど、セット売りもしたいと思っています。逆に、大量にまとめて回収したモノを小分けにして販売することも考えています。
また、現在はtoBのみのサービスですが、一般家庭への販売も検討しています。オフィスや店舗で使われていた机を家庭で使ってもいいわけですから。
数値目標としては、来年、「プレミアム無料回収サービス」で3万件、「不用品まるっとおまかせサービス」で700件の回収を目指しています。ちなみに、業界最大手が行なっている「不用品まるっとおまかせサービス」と同様の取引きは年間約5,000件です。
エリアについては、まずは自社でしっかりと成功モデルを作ってから、他社に協力していただく形で拡大していきます。
更新:11月25日 00:05