2011年12月29日 公開
2024年12月16日 更新
《 『THE21』2012年1月号より 》
いまや多くの人が手にしているスマートフォン。まだケータイを使っている人のなかにも「そろそろスマホにしようかな」と考えている人は多いのでは。だがスマートフォンは、機種によって機能や操作性の差が大きいため、初心者にとってはなかなか選びづらい。そこで、携帯電話やスマートフォン事情に詳しい石川温氏に、携帯電話との違いから、選び方まで、初心者が気になる疑問に答えてもらった。[取材構成:前田はるみ]
Q1.そもそもケータイとスマートフォンは何が違うの?
スマートフォンは、電話やメールだけでなく、インターネットの快適な閲覧、動画の視聴や編集など、使い方次第でかなりのことができます。いわば、小型のパソコンに通話機能がついたようなもの。ですから、ときには動作が不安定になったり、操作にある程度の知識や慣れが必要になったりすることは、覚えておくべき。
また、携帯電話よりも処理能力が高く、好きなアプリケーションを入れて機能強化したり、カスタマイズできたりする点もスマートフォンの特徴です。
Q2.スマートフォンにかえたら、どんなことに役立つの?
電波が届く場所ならどこでもインターネットに接続できるので、メールのチェックやウェブサイトの閲覧など、オフィスや自宅のパソコンで行なっていたことが、外出先でもできるようになります。たとえば、外回り中にちょっとした調べ物をしたいとき、電車やバスなどの移動時間に手軽にネットで調べることができるようになります。
また、たとえば、名刺管理のアプリなどを使って、名刺のデータをスマートフォンに取り込んでおくこともできます。これなら、急に連絡先を知りたい場合でも慌てる必要がありません。ネット上のサーバにデータを保管するクラウドのサービスを活用すれば、データや資料をいつでも閲覧できるようにもなります。このように、スマートフォンはビジネスマンにとって強力なサポートツールになるといえるでしょう。
Q3.スマートフォンは、毎月どれくらいの費用がかかるの?
もちろん使い方によって変わってきますが、通話科を除いてだいたい6000円ほどです。携帯電話に比べると高めですが、基本料金や通話料金は携帯電話とほぼ同じ。大きく変わるのはデータ通信費です。
スマートフォンは、携帯電話に比べてはるかに多くのデータをやり取りするため、パケット通信費用が多くかかります。そのため、各社から5500円前後で提供されている「パケット定額プラン」に加入するのが一般的です。
機種によっては、料金プランが比較的安く設定されているものもあります。ソフトバンクとauが扱っているiPhoneや、ドコモの次世代通信サービス「Ⅹi(クロッシィ)」に対応したスマートフォンなどがそうです。料金をより低く抑えたい人は、そういったものを選ぶのもいいでしょう。
Q4.iPhoneとAndroidはいったい何が違うの?どっちが便利?
iPhoneはスマートフォンの元祖ともいえる存在で、日本でも人気です。アップルが開発した「iOS」を搭載するスマートフォンは、このiPhoneだけ。アップルのほかの製品同様に独特のセンスと遊び心があります。
iPhoneが優れているのは、その使いやすさです。操作がわからなくなっても一つだけあるホームボタンを押せばすぐに元の状態に戻ることができるので、初心者にも比較的使いやすいスマートフォンといえます。
また、アプリケーションが豊富で、音楽や映画の配信サービスも充実しているので、エンターテインメントとしてスマートフォンを使いたい人にもおすすめです。
一方のAndroidとは、グーグルが提供するOSのことです。Androidを採用したスマートフォンは、メーカーが自由に機能を付加して独自の端末を開発できるのが特長。とくに日本のメーカーは、携帯電話に搭載していた日本独自の機能を搭載して、国内市場向けのスマートフォンを開発してきました。こうした自由さからAndroidのスマートフォン端末は急増。利用者も増え、いまではiPhoneのユーザー数を超えています。
各メーカーが独自に工夫できるのがAndroidのいいところですが、そのぶん、機種によって動作や性能にばらつきがあり、品質が一定していない傾向にあることも事実です。アプリケーションについても、iPhone向けのものはアップルが審査を行なっているので一定の質が保たれていますが、Androidのアプリケーションのなかには極端に質が低かったり、ウイルスが混入していたりするケースも見受けられます。Androidのスマートフォンを選ぶ際には、その点に注意が必要だといえます。
Q5.日本製と外国製のスマートフォンだと何が違うの?
海外メーカーはグローバル市場をターゲットにしているため、操作性や画面の見やすさなど、基本的な機能をより重視した端末を提供しています。アップル、韓国のサムスン、台湾のHTC、アメリカのモトローラなどが代表的です。
一方、シャープや富士通、NEC、パナソニックなどの日本メーカーは、日本の携帯電話、いわゆる“ガラパゴス携帯”で培った技術を投入して、差別化を図ろうとしています。またデザインも豊富で、女性が好みそうなスマートフォンの端末も増えてきています。
Q6.自分にあった機種はどうやって選べばいいの?
まずは、自分がスマートフォンを使って何をしたいのかをはっきりとさせることが大切です。「おサイフケータイ」や「ワンセグ」「赤外線通信」などの機能がほしいなら日本製のスマートフォン、ガラパゴス携帯の機能はとくに必要なければ海外製、なかでもより遊びを重視したいのであればiPhone、といった具合です。主にプライベートで使うのか、仕事で使うのかによっても、選ぶ機種は異なってくるでしょう。
カタログを観るだけでは実際の使い心地はわからないので、店舗などでデモ機を実際に触ってみるか、すでに使っている人に話を聞くのがいいでしょう。家族や友人、自分と同じようなライフスタイルの知り合いのユーザーに、使い勝手やアプリケーションなどについて聞いてみると参考になります。
細かい違いにこだわらなければ、売れている機種を買うという選択も悪くはありません。売れているということは、それだけの信頼性があるともいえますから、間違いが少ないかもしれません。
Q7.使いこなせなくて普通の携帯電話に戻る人もいると聞くけれど、スマートフォンに替えないほうがいいのはどんな人?
電話とメールしか利用しない人は携帯電話でじゅうぶんですし、スマートフォンはかえって不便かもしれません。また、ふだん電車やバスに乗らずスキマ時間があまりない人も、スマートフォンを使うメリットはあまり多くないでしょう。維持費が気になる人も、携帯電話のほうが断然安く済みます。
ただ、これから各携帯電話会社から発売される新機種は、ベーシックな機能に特化した携帯電話を除けば、ほとんどがスマートフォンに移行していくものと思われます。それを考えるとスマートフォンに早めに慣れるという意味で、自分なりの使い方を模索する意欲のある人なら、スマートフォンに替えてもいいかもしれません。
Q8.最新のスマートフォンには、どんな機能が搭載されているの?
最近のトレンドとしてあげられるのは「大画面化」です。ウェブの閲覧やメール作成などには、より大きな画面のほうが使いやすいもの。最近、女性でも使いやすいようにとより小型化したスマートフォンがいくつか出されましたが、評判はそれほどではありません。
それを考えると、画面はある程度の大きさがあったほうがいいようです。
次に、「デュアルコアCPU搭載」です。従来のシングルコアのCPUより処理能力が上がり、動作や操作性がよりスムーズな機種が登場しています。
3つ目が、スマートフォンをモバイルルーターとして使える「テザリング」。この機能が搭載されたスマートフォンがあれば、外出先でノートPCなどを使う場合でも、スマートフォン経由で、ワイヤレスでインターネットに接続することが可能になります。最近は、KDDIの「WiMAX」やドコモの「Ⅹi」などの高速通信に対応したスマートフォンが増えてきており、このテザリング機能がより使いやすくなっています。
4つ目は「防水機能」。アウトドアのための防水というよりも、日常生活での防水機能が注目されています。ちょっと水がかかったり、雨に濡れたり、トイレに落としたりしても大丈夫、というスマートフォンが増えています。
ほかにも、「おサイフケータイ」や「赤外線通信」「ワンセグ」など、携帯電話でお馴染みの機能も、多くの機種に搭載され始めています。こうした機能のあるスマートフォンなら、携帯電話から乗り換える人にも、より違和感は少ないでしょう。
石川 温 (携帯ジャーナリスト)
1975年、埼玉県生まれ。『日経TRENDY』に編集長として従事し、そこで携帯電話の面白さに目覚める。その後、携帯ジャーナリストとして独立。テレビ東京系FTVチャンピオン蓬の「ケータイ電話通選手権」に出場し、準優勝を飾る。現在は「日経新聞電子版」で『モバイルの達人』というコラムを毎適更新するなど、さまざまな媒体で活躍している。
更新:02月22日 00:05