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ホルムズ海峡封鎖でイランも苦しい? 石油輸出大国が抱えるジレンマ

伊藤敏(代々木ゼミナール世界史講師)

なぜ、ホルムズ海峡が封鎖されるだけで世界経済は大混乱に陥るのか。新刊『地図で学ぶ「深読み」世界史』の著者である伊藤敏氏に、その重要性をわかりやすく解説してもらった。

 

世界経済を握るホルムズ海峡

ーー現在渦中のホルムズ海峡。なぜ、ホルムズ海峡が封鎖されることで、世界中がここまで混乱するのでしょうか?

【伊藤】ホルムズ海峡の奥にはペルシャ湾が位置しており、そのペルシャ湾が世界的な石油の埋蔵地域だからです。

従って、石油のような物資を海外に輸出するにあたっては、どうしてもタンカーのような大型船を使わなければいけない。その産地であるペルシャ湾の出入り口に当たるのがホルムズ海峡であると。

たまたまここが本当に狭いものですから、石油を世界中に輸送するうえで、ホルムズ海峡は非常に重要な場所なんです。ですから、ここが封鎖されるような事態になると、世界経済の喉元に匕首を突きつけることにもなりかねないわけですね。

ーーペルシャ湾は石油の大きな原産地とのことですが、地球全体における現在の石油の採掘量でいうと、どれぐらい大きなシェアを占めているんでしょうか。

【伊藤】ペルシャ湾に面しているイランに限定した話をしますと、イランの原油は一日当たり330万~360万バレルです。これは世界的に見れば、OPEC加盟国の中では第3位、世界全体の石油供給量の大体4.5%を占めると言われています。

ーー4.5%と聞くと、一見少なめで、何なら他のところから取り寄せればなんとかなりそうな印象を持ってしまいます。

【伊藤】そうですね。というのも、世界で一番原油の生産量が多いのがアメリカで、ロシア、サウジアラビアと続きます。これらはいずれもイランの生産量の3~5倍程度の生産量があるのですが、特にアメリカやロシアに関しては、国内での消費量も多いため、生産量の多さがそのまま輸出余力の大きさを意味するわけではない、という点に注目しなければいけません。

ですから、結果としてイランやサウジアラビアといった中東の国々が石油の輸出に特化し、世界経済にとっては欠かせないということになってくるわけですね。

 

イランにとってもデメリット?

ーーこのホルムズ海峡以外にペルシャ湾につながる海峡は地理的に存在しないのでしょうか?

【伊藤】海でつながっているのは、ホルムズ海峡以外には存在しえません。

ですから、ホルムズ海峡の封鎖という事態が断続的に続いている中で、例えばオマーン政府などのアラビア半島諸国がホルムズ海峡を迂回する運河水路を作ろうかという話が盛り上がっています。

しかしながら、それが実現するとなると国際運河になりますから、建設費や管理負担をどの国がどの程度負うのかといった問題も大きく、これまではなかなか実現化が難しかったという背景があります。

ですけれども、今回のような事態が今後も長く続くのであれば、ホルムズ海峡に代わる新たな国際運河の可能性も現実味を帯びてくるんじゃないかと個人的には考えています。

ーー新たに国際運河が完成すれば、イランは困ってしまいますか。

【伊藤】そうとは限りません。ホルムズ海峡の交通量は間違いなく減るでしょうからアメリカへの圧力はかけにくくなります。

一方、ペルシャ湾への運航量そのものは間違いなく増えます。現状、唯一の航路であるホルムズ海峡が狭く渋滞しがちなので、それが解消されるのは輸出国としてはメリットになります。

ーーホルムズ海峡が閉鎖されることによって、イランにはデメリットは生まれないのでしょうか?

【伊藤】実はイラン側も結構頭を悩ませているのではないでしょうか。というのも、イランにとって石油は国の財政を支える「目玉商品」なんです。石油が手に入らずアメリカや日本が困るのは当然なのですが、その間外貨が得られないイランも苦しいんです。

アメリカに圧力をかけたいという意思はあれど、どこまで長引かせるものかというのは、また違った問題でしょう。

プロフィール

伊藤敏(いとう・びん)

代々木ゼミナール世界史講師

1988年、東京都に生まれる。筑波大学卒、同大学院にて修士号を取得し、博士後期課程単位取得退学。高校非常勤講師や塾講師を経て、2019年より代々木ゼミナール講師として首都圏や北海道などで予備校講師として活動。

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