ガンホー・森下一喜　行き詰ったときは思い切って脱線しよう

病気をして気づいた悩まないことの重要性

　仕事を楽しむためにもう１つ心がけていることがあります。それは「悩まない」こと。新作ゲームの売れ行きが悪くても、何かトラブルがあっても、考え過ぎないようにしています。

　これは、かつて、必要以上に悩み過ぎて、身体を壊した経験があるからです。ガンホーの社長になる前、僕は別の会社を立ち上げた経験があるのですが、資金繰りなどに悩み、ものすごいストレスを溜め込んでいました。それが遠因になったのか、尿路結石になってしまったんです。これがもう死ぬほど痛くて……仕事どころの騒ぎではありませんでした。二度とこんな思いはしたくない。そこで余計なストレスを溜めないように努めているのです。

　深く悩めば悩むほど、事態が好転するなら良いのですが、そうとは限りません。むしろ、あまりに考え込むと、結果が出るのが怖くなって身動きが取れなくなり、かえって事態を悪化させることが多いと思うのです。

　それなら、下手に悩むより、今できるすべてのことを全力で取り組むことを考えたほうがいい。最善を尽くしてダメなら、もう仕方がない。何らかの教訓は得られるはずですから、それを生かして、次の機会で頑張るしかないと思うんです。

　そういうふうに割り切ることで、必要以上に悩まなくなり、いつも仕事を楽しめるようになりました。

　ただし、何をするにしても、100％の力を出し切ることは心がけています。そうしないと、失敗したとしても、「全力を出していないし」と言い訳を始める。これでは、教訓は得られません。また「運が悪かった」と考えるのもいけない。常に全力を出して失敗し、その結果を素直に受け止める人ほど、成長できると考えています。

■森下一喜（もりした・かずき）

ガンホー・オンライン・エンターテイメント〔株〕代表取締役社長

1973年、新潟県生まれ。ソフトウェア開発会社を経て、2002年にガンホー・オンライン・エンターテイメント〔株〕を創業。「ラグナロクオンライン」を国内でプロデュース。CEO兼企画開発部門統括エグゼクティブプロデューサとして、ゲーム開発の製作指揮をとる。2011年より「ケリ城クエスト」等のスマートフォンゲームを開発。2012年には「パズル＆ドラゴンズ」が大ヒット。

＜掲載誌紹介＞

2014年11月号

おかげさまで『ＴＨＥ２１』は今号で３０周年を迎えることになりました。これもご愛読いただいている皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
さて、その記念号である今月号は、原点に返って「習慣」をテーマにしています。
今、活躍している著名ビジネスパーソンの方は、若い頃からどんな習慣を大事にして、今に至っているのか。お読みいただき、「あ、これはいいかも」というものがあれば、ぜひご自身の習慣にも取り入れていただければと思います。