
指示を出しても、反応が薄い。なのに、自分から何かを提案するわけでもない。そんな「何を考えているかわからない」メンバーとの付き合い方に、戸惑いや閉塞感を覚えるリーダーは少なくありません。しかし、本当にそうでしょうか。著者は、そのマインドに警鐘を鳴らします。
※本稿は、五十嵐剛著『任せる勇気』(三笠書房)から一部抜粋・編集したものです。
どの時代でも、上の世代は新しい世代を「今までとは違う」と考えたがるものです。
今は1990年代後半から2010年頃までに生まれた世代を「Z世代」と呼びますが、1960年代生まれの私が社会人になったときは「新人類」と呼ばれて揶揄されていました。
つまり、本当の問題は「若いメンバーの扱いが難しい」ことではありません。
リーダー自身が、知らずしらずのうちに世代間の「心の壁」を作ってしまうことが問題なのです。
NEC時代の私も、世代間の壁に悩まされたことがあります。
何を言っても響かない若いメンバーがいました。プロジェクト会議でアイデアを求めても、口を閉ざしたまま。資料作成の指示を出しても、返ってくるのは曖昧な返事や無難な内容だけ...。
私はどう接すればいいのか迷いに迷い、半ば自棄気味にこう尋ねてみたのです。
「あなたは、どうしたいの?遠慮せずに言ってみて」
すると、出るわ出るわ...。次々とアイデアを出してくるのです。
それだけのアイデアがあるなら最初から出してくれとも正直思いましたが、続けて彼はこう答えてくれました。
「まずは、リーダーの話を聞いて方向性を確認してから、意見したかったんです」
この一言に、私はハッとしました。
彼のほうがよほど大人で、私自身が本音に向き合えていなかったのです。
私はNECを定年退職した後、システムコーチングの研修や出版活動を通じて、多くの異業種の方や若い世代の人たちと、フラットに接する機会に恵まれました。彼らにとって私は評価者ではないので、みなさん正直に本音で接してくれます。
だからこそ、気づけたことがあります。
若い人たちの向上心や行動力、考える力は、私たちが想像している以上にたくましい。そして、成長願望や利他心、社会貢献の思いもしっかりと持ち合わせているのです。世代は違えど、根底にある志は同じでした。
それなのに、「先輩を立てなければ...」「リーダーに従わなければ...」といった忖度が、若者の力を押し殺してしまう。組織の中で過剰に上下関係を意識させられた結果、彼らの才能はフタをされてしまうのです。
だから、忖度は排除しなければなりません。
特に1990年代以降に生まれた若者たちは、幼い頃からネット環境やSNSに接してきた世代です。大量の情報をさばくのに長けており、最新のニュースやトレンドにも敏感です。「こうあるべき」という旧来の価値観も、驚くほどの速さで簡単に入手できます。
正確性を見極める能力も持っていますから、先輩やリーダーの言葉を鵜呑みにはしません。こちらが的外れなことを言うと、聞いているような顔をしながら、内心ではスルーしています。
今の40代や50代が経験してきた、限られた情報にしか接することができず、リーダーの言っていることの正否を精査すらできなかった時代とは、もはや状況が異なります。現代の若者たちは、知識も情報も幅広く、驚くほど賢いのです。
そんな彼らに、上から目線で「教えてやろう」「言うことを聞かせよう」としても、決して受け入れてもらえません。
かつて、チームの中にあった「情報の非対称性」は完全に失われました。
リーダーが情報を独占し、教えることで支配する時代は終焉したのです。
そして、そんな若い世代に力を最大限発揮してもらうためには、「仕事で何を得られるか」を明確に伝えることが大切です。
「このチームでがんばれば、成長できる」
「このリーダーは、自分を認めてくれている」
こうしたメッセージを、ただ言葉で伝えるのではなく、日々の行動や接し方でも示していく必要があるでしょう。
更新:10月23日 00:05